(※解説4)
心理学で一番困るのは、西洋の心理学をそのまま日本に持ち込んで、その上で日本人の心理を説明しようとすることである。岡によると西洋は「第1の心」の自我意識の心理学であり、日本人はいまだ日本独自の「心理学」などというものはないのだが、本来「第2の心」の無私の心の世界なのである。その違いを改めて見詰めなおして頂きたいものである。
さて、岡のいう西洋のソール(魂)であるが、西洋で「情」というと第1の心の「情」、つまり「感情」のことである。私は嬉しい、私は悲しい、私は愛す、私は憎むと「私」が入るのが「感情」である。西洋のテレビや映画はほとんど全てこの世界である。
映画でいうならば、私が幼い頃高峰秀子主演「喜びも悲しみも幾年月」というタイトルの映画があったのだが、あれは自分の喜び、自分の悲しみが幾年月という意味ではない。人の喜びを喜びとし、人の悲しみを悲しみとして幾年月という意味である。
だから、日本で「情」というと第2の心の「情」であって、これは「無私の情」のことである。「私」が入らないから人の喜びを喜び、人の悲しみを悲しみ、自然の情(風情)を自分の情とする。これが岡のいう「真情」である。
西洋文明が入ってきて、漱石の「情に棹させば流される」という言葉のように、その違いがわからなくなってしまったのが、今日の日本の現状なのである。
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