「情の世界」
【9】 孔子の仁
どれくらい道徳というものを知らないかと云うと、西洋人に道徳とは何か正しく云った人はありません。東洋では、道徳のことを一番云ったのは孔子でしょうが、孔子は道徳の形式をいろいろ云いましたが、内容については「仁」であると云っている。
仁とは何かって云ったら、真情のことです。情の濁った部分なんかを削ってしまってきれいにした情、真情が道徳です。仁です。
「仁」と云わないで、「真情」と云ったら、孔子以後の今までの間に人はだいぶん良くなったんだろうけど、仁なんて云うものだから、何のことかわかりゃしない。
日本でも儒教は形式ばかり覚えてしまって、内容については何んにもわかってやしない。効果あげられなかった。孔子はなぜ真情と云わずに仁と云ったのかと云うと、わからなかったからです。
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