「情の世界」
【14】 人はまだ人類になっただけ
それから、学校について云うなら、人は実に悪いことをする動物。動物の中で本当に悪いことをするのは人だけ。これは大脳前頭葉がある為。大脳前頭葉の主人公が自我。
孔子はこの自我を飼い馴らして、真情の命に従うようにするのに70年かかった。しかるに今の教育は、自我を主人公として行為するのが自主的であると教える。その他すべてそうです。
これはアメリカのデューイの教育学による。これが如何に悪い教育か。自我を真情の命に服さしめるのが一番むつかしいのですよ。
ひとはまだ人類になっただけ。ここのところがうまくいってない。で、非常にほねがおれる。それさえ出来れば、少なくとも孔子のようになれる。「欲するところに従って矩をこえず」という人になれる。それを教育は全然やらない。やらないだけならいいが、自我を奨励している。自我を著しく出すことを自主的と云い、自我のほしいままを自由と云っている。
大脳前頭葉に対して如何に誤っているかということを、真情の世界に住むということがどんなに大事なことかということを、知りさえすればそれでよいのです。
ともかくどの家庭も、子供は生まれた時そうなんだから、そのまま懐かしさと喜びの世界から外へ出ないようにして、成人式まで持っていくよう気を配ってほしいと思います。そうすれば、今見るからに冬枯れの野を思わせるような日本の国の心の世界も、いっぺんに緑の芽をふく。それをやらなきゃ、人類の滅亡は喰い止められない。
|