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2017.05.02up

岡潔講演録(26)


「情の世界」

【20】アメリカは前頭葉の世界

 お幸せにというふうなことを云ったり、あるいはこの子の将来が幸せであればよいが、というふうなことを云ってる時の心には、自我はいらんでしょう。

 雨の趣き、すべて何々の趣きというものは、意識を通してはみられない。本当かと思って、意識を通してみようと思ったりしたら消えてしまう。放っておけばまたその趣きが出る。

 テレビをみてもわかりますが、アメリカ物と日本物とは全く違う。アメリカ物は前頭葉の世界です。日本物はだいたい後頭葉の世界です。頭頂葉はなかなかわからないのです。

 欧米人は前頭葉以外に心の座を知らない。大脳生理学、心理学、みなそこから出ない。そのため、一層悪いのは前頭葉だとわかるんですね。ああいうことをやってくれたから、よくわかるんです。

 深い情はそれが命なんです、それが自分なのです。浅い情がいけない。釈尊、こころを区別するっていうことが出来なかったんです。日本人にこれが出来るのは、欧米人の力が余程はいってますけどね。

 もっと手短かに云えそうなものだと思うんだけど、云ってみたら割合時間がかかります ね。

 (質問) 人に節操あるは情あるによる。おそれいりました。

 「情に棹させば流される」って云うのは、感情のことです。本当は、前頭葉の情などというものは、情の浅い部分というよりも、真情を前頭葉という映写幕に映した影だと云った方が正しいでしょう。

 感情の中には時間空間がある。情の中にはそれがないのです。総て前頭葉のものは時間空間がある。だから時間空間のある世界って云ったら、前頭葉の世界。それがいけない。だから本当のものを知りたければ、時間空間を超越しなきゃいけない。

(※解説20)

 アメリカは訴訟社会だとよくいわれる。そこに前頭葉の世界の特徴がよく現れているのである。

 アメリカでタバコを吸った人がガンになる。そうするとその人はタバコを売った会社を訴える。そして判決が出ると、タバコを売った会社が訴えられたとうり、敗訴したのを以前テレビで見たことがある。

 また、岡がよく引く例であるが、日本人がアメリカで友人の家に招かれて、その隣の家のお庭も拝見しようと入っていったら、突然銃で撃たれた。その人は幸い命に別状はなかったのだが、裁判に訴えると息巻いた。そしたら、それは相手の正当防衛だから、訴訟は諦める方がよいと友人になだめられたということである。

 こういうのがアメリカ社会の常識であるとすれば、アメリカ人は「自分の否は決して認めない」、人と人との関係は「やるかやられるか」だと思っていることになる。今度就任したトランプ大統領のやり方を見ると、それもうなづけるような気もする。特に「力の思想」があからさまに出ている。

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