(※解説15)
岡はこの時期、名誉心を最も嫌っている。岡は第10識「真情」を発見した矢先だから、第7識からくる本能や欲望ばかりではなく、第9識(知の世界)からくる「偉さ」を求めるという、いわゆる名誉心が鼻につくのだろう。
たとえ自分は生粋の日本人だと思っている人でも、東洋の仏教や儒教の影響のある人は特に、この岡の嫌う名誉心が心の底流に潜んでいることが多いのである。
これはこういった思想の方面ばかりではない。岡は当時の政界財界をも嫌ったのだが、その政界財界の人々の価値基準も、大概はこの名誉心にあると岡は嘆くのである。だからアメリカン・ドリームばかりではない、立身出世や名誉心を目標とする人生を、何の意味もない「愚劣な」人生だとまで言い切るのである。
「人生意気に感じては 成否を誰かあげつろう 消えざるものはただ誠」
と土井晩翠の言葉を借りて岡はよくいうのだが、「成功が人生の目的ではない」「成すべきことを成す!」というのが岡の信念である。
不肖私も甚だ未熟ながらも「人生意気に感じて」のみ生きてきたつもりである。
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