岡潔 「情の構造」の解説
講演日 :1972年5月28日
於 奈良 大安寺
横山 賢二
はじめに
前回の「情の世界」は岡の資料の中でも私が最も世に伝えたいものだったので、敢えて全文をご紹介したのだが如何だったでしょうか。
今回の「情の構造」はもともと「基礎的知識を考える」という岡の講話を私が抜粋したものであるが、岡の説く「情」のいわゆる完結編といえるものであって、これがなければいくら岡が「情」を詳細に説いたとしても、心を構造的にみる視点に欠けるため、説得力の弱いものとなりかねないのである。
また、この「情の構造」によって日本人のアイデンティティである第10識「真情」の位置づけも明確になるばかりではなく、今まで曖昧だった人類共通の「心の構造」が最終的に1つの物差しの上に乗ることになるのである。
つまり、フロイトやユングの深層心理学ばかりでなく、東洋の儒教や仏教や老荘、更にまた今日まで不問に付されてきた「日本の心」の位置づけも鮮明となってくるのである。
更に宗教でいえば、岡の説く「第2の心」が広く一般的に宗教の世界ともいえるのだが、ご存知のようにその宗教にもいろいろなものがある。しかし、この岡の「情の構造」という物差しによって、その複雑な宗教の世界も整理統合されると共に、今までの宗教を越える人類にとって全く新しい宗教も、岡によって提唱されることになるのである。
猶、心の世界を「層」にわけて説明する方法は仏教の唯識論にあるのだが、岡の数学的発見の代表的なものに「不定域イデアル」というのがあって、それは数学的世界を同じく「層」で説明するものである。
だから岡の晩年到達した心を「層」にわけて説明する方法は、図らずも岡の数学的世界と相似であったのではないかと、私は兼々考えているのである。
目 次(下の項目をクリックしてお読み下さい)
【1】 真情 (童心、第1期)
【2】 真如(童心、第2期)(1)
【3】 真如(童心、第2期)(2)
【4】 真情と真如
【5】 仏教と儒教の限界
【6】 真情と日本の神々(1)
【7】 真情と日本の神々(2)
【8】 アラヤ識(童心、第3期)
【9】 人とは真情の物質的表現
【10】 大宇宙の中核は真情(1)
【11】 大宇宙の中核は真情(2)
【12】 心の基本地図
【13】 心の濁りを一掃する
【14】 祭政一致と王道政治
【15】 真情と名誉心
【16】 日本歴史の上代
【17】 人類は滅亡するか
【18】 スパルタの競技
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