okakiyoshi-800i.jpeg
2017.07.19up

岡潔講演録(27)


「情の構造」

【17】 人類は滅亡するか

 (質問) 人類はどこまで生きのびられるとお考えですか。

 すぐ滅びるかもしれない。わからない。しかし人と生まれてきた以上は、精一杯この滅亡は喰い止めようとしてみるべきです。そんなこと、出来るかどうか、とてもわかりません。

 (質問) 21世紀まで生きのびられるとお考えですか。

 わかりません。今すぐ滅びるかもしれない。アメリカの有様を見てご覧なさい、ピッツバーク市の。あれが人類の現状。少しもそれに気付いてない。

 道徳は情が知っているんですよ。幸福も情が感じるんです。その情があの有様です。危険極まりない。幸福を感じるから人の世は安定する。感じなかったら、幸福を感じないという原因を外に求めておかしなことばかりする。他が悪いとしなくても、昔から他の国を取れば幸福になれるかと思ったり、そんなことばかりする。

 だいたい、自我が自分だと思ったら、自我を押し通すことで、興奮と刺激とで、そんなものを幸福と思うんでしょう。もう、危険で仕方がない。あと30年もつかどうか、とてもわかりません。なんか勃発すりゃ、30年かかりやしない。全然わからない。

 人類が滅亡って云ったって、地球上に人類がいなくなるというふうに、造化の映し続けて人に見せているテレビが変るというだけ。筋書が変るというだけですが、造化はどんな筋書にするつもりかわかりません。が人として、人類を滅亡させてはならないと精一杯やるべきでしょう。やれば必ずうまくいくとはとても云えません。

(※解説17)

 今頃になって「人類は滅亡するか」なんて考えるのは、既に手遅れというものである。滅亡するのであれば2000年までに、「第1の心」の二極対立の典型である米ソの核戦争で、とっくに滅亡しているはずである。

 しかし、現状はいまだに「人類の滅亡」なんてことを心配する人さえ少ないのだが、岡はそれまでに独りさんざん心配したあげく、1974年に至って「最早、人類自滅の危機は去った」と宣言したのである。ソ連が崩壊する数年前、人類史から見れば「スレスレのところだった」と岡はいう。

 我々凡人にはとてもそんな「宣言」ができる能力も資格もないのだが、人類の現状を見れば宣言前の岡のように、「心配」することならできるはずである。

 トリビアル(詰まらないこと)は早く棚上げして、我々はまずは真っ当に「人類の滅亡」とその「危機の打解」を、真剣に考えることから始めなければならない。

Back    Next


岡潔講演録(27)情の構造 topへ


岡潔講演録 topへ