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2023.02.13up

岡潔講演録(29)


「岡潔先生と語る」 (1)- 東洋と西洋の融合 -

【2】 神道と仏教

 (女性)以前私「紫の火花」とか「昭和への遺言」とか読ませて頂いたんですけれども、よく高天が原という神話に関係のある言葉と、それから光明化運動の弁栄上人のお話などございましたが、仏教と神道とは何かちょっと違っていると云いますか、その辺の関係と云いますか、先生はどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。

 (岡)このねえ、人には平生の心の奥にもう一つ心があるんです。平生の心は私というものを入れなければ動かない心ですね。私は嬉しい、私は悲しい、私はしかじか意欲する、私はかくかく考えると、こういう心。その平生の心を第一の心とでも云うことにしますと、そのもひとつ奥に第二の心がある。この心は無私の心です。私というものが無い。私というものを入れなくても働くし、また入れようと思っても入れることが出来ない。第二の心が働いてるから第一の心の働きがあるんですが、人はこれを知らない。東洋人は知ってたんですけどね、欧米人は知らない。日本は明治以後欧米の真似をしてますから、段々その第二の心というものを知らんようになった。

 しかし、この第二の心が、無私の心が真の自分である、仏教はそう教えた。これを「真我」と云ってるんですね。神とか仏とか云うのはその第二の心のことです。

 仏教はいろいろ理論を説明しますが、神道は何も云わない。だから仏教の教える原理によって神道を説明してる訳ですね。

 人はみな神なんです。ただ眠れる神なんですね。普通神と云ってるのは目覚めた神なんです。その神のことを仏教では仏と云ったり、あるいは目覚め方が不充分な時は菩薩と云ったりしてるんですけど、同じものなんですよ。まあ、そんなふう。

 一番詳しく原理を説明した人は大正九年に亡くなった山崎弁栄という上人です。この人はもと浄土宗だったんですけど、浄土宗から出て光明主義という一宗を起こされた。非常に詳しく説明してなさいますから、よく光明主義の名が出るんです。別に光明化運動ちゅうようなことをやってる訳じゃありません。

 (女性)第二の心、第一の心って・・・

 (岡)第二の心、奥にある心、それが神なんですね。ただ普通の人にあっては眠ってる。眠ってると云っても働いてはいますが、それを自分だと自覚しない。

 (司会)まあ、我々みんな神の素養があるっていうことですか。

 (岡)眠れる神です。

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