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2023.02.13up

岡潔講演録(29)


「岡潔先生と語る」 (1)- 東洋と西洋の融合 -

【7】 政治、天皇

 (男性)今ちょっと話の出ました天皇制についてですが、現在の憲法の天皇制について、どういうふうにお考えでしょうか。

 (岡)いやあ 憲法いけません。(笑)天皇ですね。今上(きんじょう)陛下見てみますと ―― 見てみますとなんていう言葉を使うのがそもそもいけないんだけど、まあいいでしょう。(笑)そういうとこまで固くなると行き過ぎになる恐れがある。

 アメリカの大統領っていうふうなもの、ありますね。こういうのは国の中心ですが、これは(じつ)の中心です。大統領は仕事の出来そうな者を選んで、しっかり仕事をしてもらおうというんでしょう。これ、実の中心です。ところが今上陛下は(きょ)の中心。どういうふうかって云うと、第一選び方ですが、これは明治以後初めてはっきりそうなったんですが、誰を天皇に選ぶかという自由は、人には決してない。神々にある。いつに神々の自由。この人を天皇にしようという人を、時を選んでそこへ生まれさせたらよい訳でしょう。自ずから天皇になる。だから選択の自由が神にあって人には無い。云い直せば、全然選択の自由が無い。

 それから、普通アメリカの大統領と限らず、人は仕事はしたいが責任を持つのはいやだと、こんなふうでしょう。ところが、今上陛下は責任はことごとくお持ちになったが、仕事は何もなさらなかった。つまり、裁可は総てなさいましたが、裁決はひとつもなさらなかった。そうするとご自分ではひとつも仕事しないで、責任はことごとくお負いになった。こんなふうでしょう。

 虚の中心というものがちゃんと出来てる。これは日本人は第二の心を自分ということがよくわかってる。第二の心の本体は、一口に云えば空です。空と云えば時間も空間も無い。完全な空。こういう民族だから、虚の中心というものが出来たので、これは日本民族文化的にろくなことしていませんが、政治において虚の中心というものをつくった。これは擱筆(かくひつ)大書すべきことだと思う。で、これはちゃんと出来上がってる。で、これだけは是非政治に取り入れなきゃならん、そう思うのです。

 天皇は出来上がってたんだけど、政治は後がうまくいかなかった。このからだと第一の心、これを個人と云う。個人は人だと思ってるのが西洋でしょう、欧米でしょう。これは小我と云って、小我を自分だと人が思うのは迷いだと仏教は教えたんです。それを人だとして、その上に政治を組み上げたでしょう。欧米のその政治のやり方を明治以後取り入れて真似してるでしょう。だから政治のうちでちゃんと出来てるのは天皇だけであって、後は全部間違ってる。それでうまくいかなかったんです。大体、代議制度なんて、西洋の真似をしてる。日本、一度もうまくいったことないでしょう、これも。これは変えなきゃいけない。天皇制について、憲法勿論変えなきゃいけない。大体憲法などというものは有り得ない。

 (男性)つまり戦前の憲法に返すべきなのですか。

 (岡)やっぱりいけません。

 (男性)これもいけませんか。つまり明治以後のものはいけないのですか。

 (岡)ええ、みないけません。西洋の間違った考えを取り入れてんですね。

 胡蘭成って云う中国人があります。汪兆銘政府の法制局長官兼情報局長官。それが汪兆銘政府瓦解して、蒋介石に死刑の宣告受けた。今だに死刑の宣告受けてる。それで日本へ亡命して、今居るんですが、その胡蘭成さんの云うところによると、日本の万世一系の皇統は、万世一系の政体は、万邦無比である。日本はしかし明治以後欧米の真似をしたのがいけない。明治の始めに祭政一致が云われた。すべからく祭政一致に変えるべきだった。胡蘭成さんはそう云ってます。「建国新書」という本を日本語で書いて、出てますが、その本にそう書いてある。

 ともかく変えなきゃいけないと思います。変えなきゃいけないということは、わたしも「神々の花園」というのを講談社から出しましたが、そこへ書いておいたはずです。大体「曙」というのと「神々の花園」というのと、去年二冊書いて講談社から出しておきました。その「曙」に葦牙会のことを書いてある。それから政治について多少「神々の花園」に書いておきました。

 (司会)それではこのあたりでしばらく先生にご休憩頂きまして・・・

 (岡)別に休むこともないですけど。なんか、みんなでワチャワチャお話なすった方、いいですか。だったらわたし、あっちへ遠慮しますけど。(笑)わたしは別に何も疲れてやしませんよ。

 (司会)まあ、足のしびれている方もいらっしゃるのじゃないかと思いますし、これまで聞かれましたことを、もう一度皆様よく整理なさいまして、あとでもう一度ご質問して頂ければと思いますが。

 (岡)そうですか。

 (男性)お茶を入れましょうか。

 (岡)はい、じゃ頂きます。

 (司会)座談会が終わりましたあとで、先生と一緒に記念写真を撮りたいと思いますので、最後までよろしくお願い致します。じゃ、どうぞご自由に。

 (休憩)

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