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2023.02.13up

岡潔講演録(29)


「岡潔先生と語る」 (1)- 東洋と西洋の融合 -

【8】 日本民族の滅亡は食い止めたい

 (司会)皆様、大分雰囲気になれて来たと思いますので、先程以上にどしどしご質問して頂きたいと思います。

 (岡)あの、肯定と否定の間ですけどね、日本民族の滅亡だけは何としてでも食い止めたいと思う、この一念がある。その為いろいろ云ってる。云っていることはことごとく肯定と否定との間です。はっきり知ってるのは、日本民族の滅亡だけは何としてでも食い止めたいと云う一念をわたしが持ってるということだけです。これも自分がそうであると知ってるだけで、別にこれ肯定も出来んでしょう。あとは全部肯定と否定の間です。何か云いたいと思ったら、否定出来ないところをうまくくぐり抜けて、そういう道をさがして、いろいろ云ってる。それだけです。

 日本民族というものの実体は、名状しがたい懐かしさである。この名状しがたい懐かしさという日本民族というものは、常住にして不易です。いつもあって、そして今もある。そう思ってるんです。わたしの宗教と云えば宗教です。これは(ひと)に教えられてそう思ってるんではない。その日本民族の滅亡だけは何としてでも食い止めたいと思ってるんです。

 これははっきり云えることです。あとわたしの云ってること全部を、呼んで、肯定と否定との間と云う。否定されそうなところをくぐり抜けては云ってる。何故そう云うかと云えば、何としてでも滅亡は食い止めたいと思うからです。他に理由はありません。

 (男性)今、日本民族の滅亡を食い止めると・・・

 (岡)だけは何としてでも食い止めたいと。非常に滅びそうに思う。

 (男性)このままで行けば日本民族が滅亡するということですか。

 (岡)神々がいなければ。とても人力では食い止められないと思います。終戦後実にひどかったんだが、この頃すこし果してこれでよいのかという疑惑が広まってる。これは神々の力ですな。

 先程云った胡蘭成さんは、人には(しき) ―― 識ったら知ですが ―― 識は三つある。一つは顕在識。今日学校で教えることはみな顕在識。もう一つは潜在識。例えばとうもろこしは台風の襲来を予知する。これは植物だが、人にもそういう働きがある。これが潜在識。もう一つは悟り識。悟り識が開けなければその文明は真の文明にはならない。日本民族や漢民族は古くから悟り識が開けている。しかし欧米人は一向に悟り識が開けない。こう云うんですが、わたし今の日本人みてみまして、悟り識なんか開けてやしないと思う。悟り識が開けてない見本が今の日本人だと思う。これは人力では、到底仕方がない  神々の力によらなければ滅んでしまうと思います。非常に滅びそうに思うんですよ。それで何としてでも滅ぼしたくないと思う。人がしたってどうってことありませんが、神々が働いてくれるのなら滅びないかもしれない。神々だけに働かして、人は何もしないでいてもよいという理屈はありませんから、それでまあ精一杯やってるんです、やろうと思ってるんです。

 (男性)世の中を見ておりますと、段々危なくなって行っているので、お互いがどういう点に気をつけたらいいのか。また、学校などではどういう点が悪いとはっきり自覚し、どういう点に力を入れていけばよいのか、と云うようなことについて、先生ご指導をお願いします。

 (岡)第二の心というものがある。これは無私の心です。総ての良いことは、本当に良いことは、この心の働きです。だからこの心がよく働くように教育しなければいけない。それには何よりも自己中心ということがいけない。これをわからささなければ始まらない。

 (男性)それ、先生、仏教ではね、奉仕の精神、布施の心ですね。

 (岡)ええ、そう。

 (男性)そういうような心と云うことになる訳ですか、今の言葉で云えば奉仕精神と・・・

 (岡)ええ。

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