「岡潔先生と語る」 (1)- 東洋と西洋の融合 -
【16】男女共学、教育
(司会)あまり時間もございませんので、あと一、二問お受けしたいと思いますが。
(女性)教育について、先生は男女共学を否定していらっしゃいましたね。
(岡)共学、いけませんな。
(女性)女性は女性としての情緒があるって聞きましたけど、女性は女性としての、男性は男性としての情緒とは・・・
(岡)男性と女性で、赤ん坊とか小さな子供とかの好みが全然違いますね。違いますよ。女性は昔なら、赤ん坊とか赤ん坊あがりの時分は、ままごとなんか好きで、お人形が好きで、何か、ああいうままごとっていうふうな遊びが好きです。男性はおもちゃなら乗物とか棒切れとかが好きで、そんなもの振り回して走り回るのが好きです。男女性というのは完全に違ってるものらしいんで、共学というのは元々無理です。しかし何よりも共学が一番いけないと思うのは、男女共学にしますと、男性というものに慣れてしまって、男を男臭いとも思わんようになるらしい。これ大変いけないと思うんですな。それから女性がたくましくなる。これもいけないと思うんですな。(笑)ともかく、今の教育を受けた女性は賛成出来ません。別学がよいと思います。そうしないと本当に幸福な結婚生活の家庭を持つということはやりにくいです。
男性は外で働くべきで、女性は矢張りよい子を産んでよく育て、家庭を守ってと、そんなふうに生まれつき、天性始めから分かれているようにわたしは思います。女性には家庭を与える。そうでなければ女性の幸福はあるまい、そう思います。
昔ある小説に、誰の小説かわかりませんでしたが、あの頃の女学生は ―― 今で云えば中学生と高校生ですね ―― 女学生は新鮮な果物のようだ、そう書いてありました。今の中学生、高校生の女生徒に新鮮な果物のようだと云う感じは全然ない。大体、新鮮なという形容詞がつけられない。そう思います。
こんなことを云うと受けが悪い。(笑)でも間違ってるものは変えなきゃいけない。だけど日本の女性、悪くなりましたね。(笑)顔つきも変わった。昔の顔と写真で比較してみると、変わってる。たくましくなった!
女性がたくましくなったら仕方ないでしょう! 男は凛々しく、女は優しくと
―― 床しくかな ―― 男は凛々しく女は床しくと、そんなふうに昔から云って来たものです。こういう言葉は、男女共学以後使われません、当てはまらない。
日本の教育のもっとも悪い面の一つが男女共学だと思います。これは何も定見があってしたんじゃない、アメリカの真似をした。アメリカの真似をそのまました。元へ戻すべきです。教育で一番間違ってるのは自己中心、その次ぐらいが男女共学でしょう。
(司会)その点について、何かご意見のある方、ございませんか。矢張り男女共学がいいんだと云う方もいらっしゃると思うんですけれども。
(岡)アメリカか?(笑)
(男性)教育についてですが、子供の接する世界が、交通が便利になった結果広くなっていますし、あるいは目でみる世界も、テレビなんかを通して広くなり、情報網が大きくなっておりますが、そういうのは教育にとって・・・
(岡)気が散るんですなあ!
(男性)いいことでしょうか。
(岡)悪いこと! テレビはやめてしまうにこしたことないんです。(笑)交通も、自動車なんか一台も走らさんにこしたことないんです。出来ませんけどね。教育は段々やりにくくなってるということを知るべき。
(男性)そのへん、僕は非常な問題だと思っているんですけれども。
(岡)非常に悪い! 交通も、それからテレビも。随分気が散りやすくなってるん。
(男性)それを世の親達が文字を何個覚えたとか、そんなことを新聞でも大々的に・・・
(岡)いやー、心配しなくっても、文字なんかほとんど覚えてやしません。
(男性)形としてぐらいしか覚えてはないと思いますけども。
(岡)いや、文字を知らない!
かまいませんけどね。機械をいじることは上手。文字を著しく知らない! かまいませんけど。わたし京都の産業大学で教えていて、一番書きたいものについて作文を書けって書かした。それで採点するんですが、教養科持ってる。その時、まあ当て字とか仮名とかが多くて!(笑)字を知らんなあと思いました!
字なんか知りゃしません。
(男性)僕なんかも知らないです。僕なんかは大学出ていますけど、母親に負けますから。どうも矢張り知らないようです。
(岡)ええ、もっと知ってた方がよいようですねえ。(笑)わたしなんかもあんまり知ってる方じゃない。すぐ字がわからなくなって、この字はどう書くんだっていうふうなことを家内に聞いたりしますから。わたしより十年前の人は字をよく知ってますね。あの十年位で大分変わったらしい。日露戦争直後の十年ですが。
ともかく交通は困る、それからテレビも困る。教育は段々しにくくなっていってる。
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