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2023.02.13up

岡潔講演録(29)


「岡潔先生と語る」 (1)- 東洋と西洋の融合 -

【15】 歴史は民族の叙情歌

 (女性)子供のことなんですが、小学校三年生の男の子ですが、歴史の本を読むのが非常に好きなんです。始めのうちは私も一緒に読んでいたんですけれども、この頃では段々おっつかなくなってきました。で、歴史の本なんかでも読むんですが、それに対して何か指示を与えるとか、親として何か気をつけてやるべきことはありませんでしょうか。

 (岡)いえ、もう歴史が好きでお読みになれば結構なことです。歴史というのは本来民族の叙情歌であるべきもので、だから民族の叙情歌というふうな方面を強調してある本を選んでお読ませになるとよい。どういうふうな歴史だろうかと、いろいろ批判したりはいけない。そんなん、古いことを批判して何になりますか、済んだこと。人は過ぎ去ったことは、総て悪いことは忘れてしまって、いいことだけ覚えていて、過去は懐かしいと思うん。これを「時の美化作用」と云ってる。これあるが故に人類は向上するんです。民族の昔の良いことだけを思い出して、昔を懐かしいと思うことが大事なんです。そういう趣旨に合ってる本であるかどうか調べてやるだけはなすったらよろしいので、喜んで読めば読むに任せておくに限る。

 (女性)戦国時代とか・・・

 (岡)ええ、あれ面白いから! それで結構です。戦国時代にどういうことがあったっていうふうなことを知るのも、民族の歴史を知ることです。織田信長は強かったんやぞ、っちゅうようなことを云ってても、それでいいんです。良い歴史の本が出来てくれるとよいんですけどね。

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