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2023.08.20up

岡潔講演録(31)


「岡潔先生と語る 」(3)- 西洋の真似はやめよ -

【25】 現状の認識ができない

 (岡)あなた方が一番おわかりにならんのは、現状を認識することが出来んのです。現状は実に心配であって、日本を個人にたとえるならば、いま瀕死の状態である。死んでしまいはしないだろうか、助かるだろうか、そういう状態。それがわからないから、いくら云ってもすぐ話をつまらない方へ持って行ってしもう。それが一番困る。すぐつまらない方へ話を持って行くそれは現状が認識出来んからです。それは妙観察智が働かんのですね。妙観察智が働かんことを、普通心眼が働かんと云ってるでしょう。さっき質問を受けた時は思い出しませんでしたが、妙観察智の目を心眼と云う。中国にこういう詩があります。

  君不看双眸(きみみずやそうぼうのいろ)
   不語似無憂(かたらざればうれいなきににたり)

 目を見るとその人の心がわかると云うんですね。これは妙観察智の働きです。これがよく働いてこないといけない。めくらですどうすればよく働くかと云うと、自分を忘れるとよく働く。自分を忘れることですが、無私とか無心とか云われてるんです。その状態において妙観察智はよく働くんです。道元禅師は、

  聞くままにまた心なき身にしあらば
   おのれなりけり軒の玉水

 と詠んでます。聞くままにまた心なき身にしあらばと云うんだから、現在は心なき身ではない。もしまた心なき身になったならば、おのれなりけり軒の玉水。そうすると、自分にかえったのち、軒の雨垂れが自分であったと気付くであろう。こう云ってるので、妙観察智というのは我を忘れてる時に働いて、自分がそのものになってるんですから、気付くのは我にかえってからあとです。それが心眼ですね。この目が働いてるから、人は環境の中に生きているので、でなかったら環境と自分とは何の関係もないでしょう。

 (司会)本日はこれで終りにしたいと思います。どうも長時間にわたりありがとうございました。

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