okakiyoshi-800i.jpeg
ohono-041s.jpeg
2013.7.27up

岡潔講演録(7)


「岡の大脳生理」

【14】京都産業大学講義録

(録音テープ) 1972年6月6日

 物質が法則を満たすということは、物質に絶対的な知性と意志とがあることを仮定してのことである、仮定しなければ言葉の意味がわからない、と云いますとね、日本人にこんな話をしますとね、『スカミタイナ顔』してる。スカミタイナ顔と云うのは、日本人にこういう非常に大きな真理を話した時のことです。大きすぎてわからん。フランス人はねえ、『知的興味を以って膝を進める』

 こういうのを『白痴』と云う。日本人はなぜレバノン事件(レバノン空港での銃による無差別殺人事件) のようなことをしでかすか。白痴だ‼ 犬猫と選ぶところないじゃないか! 話が大きくなればなる程、大切なことになればなる程、それが知的な宝であればある程、無関心。君等の顔がそうなん。大切な知識になる程無関心。こんなのを白痴って云うん。つまらないことだと熱心に聞く。前頭葉の発育が悪いん! だから応神天皇以後真似ばかりしてる! 白痴だから危なくてしょうがない! いつ何をしでかすかわからん! だけどこの白痴だって、西洋人を日本人にするには20万年はかかるだろうと云いましたが、前頭葉の白痴をなおすのだって2千年位はかかるだろう。ともかく応神天皇の頃からちっとも良くなってやしない。2千年位じゃどうにもならんかもしれん。

 それだと仕方ないから、初め、進化の度は遅れてるんだけど、20万年位遅れてるだろうけど、ともかくレシーバーを持ってる欧米人に先話して、ともかく人類の滅亡を喰い止めるより仕方ないかもしれん。

 君等はレシーバーを持たん!

 えー、これは欧米人から先にったって無理です。レシーブはしますけど、本当に見ようと思った時、情の目でしか見られんから。 (欧米人は)これが働かないから。だから非常にわかりのいい盲に外界を教えるようなもの。で、やはり日本人にやってもらうより仕方ない。

 (日本人は)前頭葉は非常に悪いんです!

(※解説19)

 ここもちょっとおもしろい所なので拾い出してみました。岡は数学で使う頭は前頭葉だというのですが、日本人はその前頭葉の発達が西洋人に比べて大分遅れているらしい。「独創性」の働く前頭葉を使うはずの科学者の中でも、前頭葉を使わずに側頭葉の「工夫考案」ぐらいで済ましてしまう人が可成りあるようです。

 逆に、日本人の特徴としては、日本人は心の世界が深い(第10識、情の世界)のであって、後頭葉の「情緒の世界」である和歌や俳句を昔からたしなんできた民族には、大脳前頭葉の発達が遅れているのは無理もないのかも知れない。

 岡自身も前頭葉は西洋人に比べれば、そのタフな強靭さにおいて遥かに劣ると自ら認めるものの、要はその使い方が大事だというのです。それには先ず何よりも「大和ごころ」を持つこと、つまり日本人としての自覚のあるなしが非常に影響するという。

 次に野球でいえば、重いバットを振り回すのではなく、軽いバットでタイミングよく振り切ること、つまり前頭葉をうまく使いこなせといっている。

 ともあれ岡にいわせれば、日本人は心の世界において20万年は西洋の先を行っているのですが、逆に前頭葉の発達は2千年西洋に遅れをとっているのであって、その二面性が日本人の掴みどころのない長谷川如是閑が指摘する「両極性と多様性」として現れていて、岡が「日本人は白痴だ」というのは、そのもどかしさの発露なのです。

Back Next


岡潔講演録(7)topへ


岡潔講演録 topへ