(※解説8)
ここも岡が「無明の画家」と評するピカソや、じっと見ていると「何だか寂しくなってくる」というセザンヌの風景画等と共通するところである。
ミロのビーナスというと今でもギリシャ芸術の最高傑作といわれ、日本で展覧会でもあれば長い行列ができることだろう。しかし、若かりし日の岡の直感は誠に鋭い。
ギリシャ神話を貫く思想は「力の強い者が神である」という考え方であると岡はいう。その神話を読んでみても、神々がお互いを平気で痛めつけ殺しあっても、相手の痛みを感じるというセンスが丸でない。これをショーペンハウエルは「意志の世界」といったのだろう。
これが芸術の世界に現れた西洋の世界観であって、ピカソの生きようとする盲目的意志である「無明」といい、自然から一人孤立するセザンヌの「寂しさ」といい、「人を威圧するような」と岡のいうミロのビーナスの「冷厳さ」といい、全て「第1の心」の特徴が現れているのである。しかしながらそうはいっても、それらは確かに偉大なる芸術であることに違いはないのだが。
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