岡潔 「人類自滅の危機」の解説(抜粋)
講演日 :1969年3月23日
於 奈良県公開堂
横山 賢二
はじめに
今回から数回にわたってお伝えするのは、岡が必死に警鐘を鳴らした晩年中期にあたる1969年の講演のいくつかですが、残念ながらそれらを全文で紹介することは甚だ難しいので、その出色のポイント箇所だけを抜粋の形でお伝えしょうと思います。
これらの講演録は、実は岡先生が1978年に亡くなられて丁度10年目の1988年に私が奈良の岡家を訪ねた折、長男の熙哉さんが秘蔵していた20本程の録音テープの主なものを私が文章化したものでして、当時畏る畏るそのテープの複写を熙哉さんに申し入れると早々快諾を頂き、私が1973年に岡先生と対面した岡家の和室の客間で夜を徹して録音したものであることを今も思い出します。
先に「岡先生が亡くなられて丁度10年目」といいましたが、この「10年」という数字は非常に意味深重な数字でして、生前岡先生は「今はまだ私のいうことは誰の耳にもチンプンカンプンだろうが、もう少しして1988年頃になれば、私のいってることが日本人にも次第に伝わりはじめるだろう」と言い残しているのです。
まさか私のような者とこの「10年目」とが符合するとはとても思えませんが、ともかく私はその後研究会を細々と続けながら、この録音テープを私なりに書き起こし私独自の資料として大切に保存して参りましたが、その内容の深さと今日的意義の大きさとは裏腹に、この資料に目を向ける人は今日まで少なく、この20年の間にその出版はとうとう叶いませんでした。
しかし、私から見ればこの岡の晩年中期の入り口ともいえる1969年の岡の思想は大変おもしろく、かつまた人類にとっても非常に貴重なものですので、これを世に問うことは私のささやかな役割の1つではないかとも思い、先ずはこうして抜粋の形で発表しようかと思い立った次第です。この資料は岡の晩年未発表のものの中ではほんの一部ですが、願わくばこの資料がいつの日か正式に世に伝わることを願って止みません。
目 次(下の項目をクリックしてお読み下さい)
【1】 念と大脳生理
【2】 欧米人と頭頂葉
【3】 大日本史
【4】 数学道場
【5】 階級と搾取
【6】 大学民主化
【7】 毛沢東の大砲
【8】 ミロのビーナス
【9】 ヒューマニティー
【10】 西洋音楽の指揮者
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