岡潔 「一滴の涙」の解説
横山 賢二
はじめに
前回は、岡潔「2つの心」の解説をお伝えしましたが、如何だったでしょうか?
あまりシンプルすぎて、もう少し詳しく聞きたいという声が聞こえてきそうな気もいたします。
実は岡がこの問題を考えはじめたのはフランス留学の時からですので、あの数学者の頭をもってしても、この問題に何と40年の歳月を費やしていることになります。この「2つの心」という西洋と東洋の心の構造の問題は、岡自身にとってもそれほど大きく難しい問題だったのです。
今日の人類の先の見えない危機的状況を打解し、新しい時代をこれから切り拓いていくために、岡はこの「2つの心」というキーワードを密かに、ただ無言で我々に遺してくれているのです。
さて、この問題が岡にシンプルな原理としてやっと解けはじめたのは、皮肉なことに1969年の著書の出版が止まる頃です。だから、その頃に出版された「曙」という著書の題名が、岡の心境をよく表しています。ある録音の中でも「この私にも、やっとわかりはじめたのだ!」という声が残っています。そういう訳ですので、我々はこの発見を人類の未来のためにも、今こそ現代に生かさなければならないと思います。
無論、この問題を解くためには岡の専門の数学ばかりではなく、西洋と東洋のあらゆる文化(理学系・文学系の学問、芸術、宗教等)の長年にわたる精密な検討があったことも、我々は忘れてはなりません。
猶、このお話は岡先生が亡くなられた1978年に、岡が関わる市民大学講座からわずかに出版された幻の書「岡潔講演集」の中の「一滴の涙」の冒頭の一節です。私はこの本の復刻が叶うことを、密かに願っているのですが。
目 次(下の項目をクリックしてお読み下さい)
【 1】
人には心が2つある
【 2】 東洋の第2の心
【 3】 情緒とは何か
【 4】 仏教の世界観
【 5】 目覚めた人
【 6】 数学の使えない世界
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