岡潔 「2つの心」の解説
横山 賢二
はじめに
これは1971年(岡潔先生の晩年中期)に発表された岡先生を囲む「葦牙会」の機関誌「葦牙」3号の「岡潔先生と語る(2)」の冒頭の抜粋です。
前回の「情と日本人」は岡先生の「情の哲学」がついに完成する頃の代表作ですが、今回の「2つの心」はその前段階のそれに辿りつくまでの基本理念(原理)を最もわかりやすく語ったもので、私の心の構造図でいえば上下2つの三角形に相当します。因に「葦牙」とは古事記の初めに出てきます、春先に勢いよく伸びる葦の新芽のことです。
岡先生の思想は何度もいうように他の人とは格段に違い、階段を登るように急激に上がっていっているのですが、この「2つの心」は晩年中期の前半のものであり、先の「情と日本人」は同じく晩年中期でも後半のものという位置づけになります。
その階段を登る足取りは非常に数学的でして、この「2つの心」では浅い「第1の心」と深い「第2の心」とを区別することによって、西洋と東洋との対比を明確にしています。更にまた「情と日本人」では、その第2の心の中での「知」と「情」の違いを見極めることによって「知」の東洋、「情」の日本という結論に至っている訳です。
そういう意味では岡の思想に初めて接する方には「情と日本人」よりも、先ずはこの「2つの心」の方がよりシンプルにわかりやすいのではないかと思います。ともあれ、この短い文章の中に西洋と東洋の心の世界のメカニズムが、簡潔に語られているといっても過言ではありません。
目 次 (下の項目をクリックしてお読み下さい)
【 1】 巻頭言
【 2】 西洋と東洋
【 3】 西洋の唯物主義
【 4】 生命現象
【 5】 水の中の石
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